コラム
本物のイタリアチーズを日本に【後編】輸入会社CEOがチーズを解説!
2022.04.12
イタリアチーズ通信講座のディレクター大塚が、チーズ輸入会社「カ・フォルム・ジャパン(CA.FORM.JAPAN)」を訪問。CEOのリカルド・バッソ(Riccardo Basso)氏を直撃しました。
日本での事業に対する想いを語っていただいた前編に続き、後編では、通信講座でもお届けするイタリア全土のさまざまなチーズについて、その魅力を伺います。
カ・フォルム・ジャパン(Ca.Form.Japan)のCEO、リカルド・バッソ(Riccardo Basso)氏。
伝統的なD.O.Pチーズをセレクト
大塚:リカルド社長の「イタリア全土のチーズを体験してほしい」という言葉がありました(インタビュー前編)。その気持ちが通信講座のテーマにも表れているように思います。チーズのセレクトについて、詳しく教えてください。
リカルド:前提として、イタリアのチーズの歴史は5000年とも言われています。長い歴史の中、各地で伝統的に造られるチーズを守っていくために、原産地名称保護制度のD.O.P(*1)も造られました。お届けするチーズの半数がそのD.O.Pチーズです。
D.O.Pマーク。
大塚:D.O.Pとは何ですか?
リカルド:ミルクの割合、生産エリア、熟成期間など、製法のさまざまな部分に規定を設けたシステムです。伝統的なチーズを楽しんでいただけるかと思います。たとえば通信講座では、D.O.Pのアズィアーゴ(アジアーゴ)というチーズをセレクトしました。これはD.O.Pの中でも生産量6位のチーズで、カ・フォルムを代表するチーズだと考えています。
*1:Denominazione D’Origine Protettaの略。画像のD.O.Pマークはチーズに限らず、原産地名称保護の対象となる食品に表示が許される。
カ・フォルム社の代名詞的チーズ「アズィアーゴ」
大塚:カ・フォルム社を代表するチーズ、興味が湧いてきます。
リカルド:僕が育った地域のチーズなので、特別な気持ちになります。食べるたびに思い出がたくさん蘇るんです。子どもの頃、週末に山小屋に行ってバターを買ったこととか。
大塚:ノスタルジックなチーズというわけですね。具体的にはどんなチーズなのですか?
リカルド:このアズィアーゴはD.O.Pチーズの中で唯一、熟成規定が4つあります。フレスコ、メッザーノ、ヴェッキオ、ストラヴェッキオの順に、熟成期間が長くなっていきます。通信講座のチーズには、フレスコとストラヴェッキオをセレクトしました。ストラヴェッキオは最低熟成期間18ヶ月という超長期熟成の規定がありますが、イタリアチーズ通信講座では20ヶ月熟成のものを選んでいます。
画像左のアズィアーゴ・フレスコ(asiago fresco)は短期熟成タイプで、チーズコンクール「CASEUS VENETI 2016」金賞を受賞。画像右のアズィアーゴ・ストラヴェッキオ(asiago stravecchio)は20ヶ月間の長期熟成タイプで、1年間に1,000玉ほどしか生産されない希少チーズ。
アズィアーゴの特徴
大塚:熟成期間の短いフレスコと、熟成期間の長いストラヴェッキオはどのような違いがあるのでしょうか?
リカルド:アズィアーゴの中でも、フレスコはとろけやすいです。食べるときは常温に戻すことで豊かな香りが味わえます。一般的なとろけるチーズは溶けたあとに冷えるとゴムのように硬くなってしまうんですが、フレスコは溶けて冷えた後も柔らかさが残って、香りも逃げにくい。冷めた状態でも美味しく食べられます。熟成期間の長いストラヴェッキオはそのままでも、パルミジャーノ・レッジャーノのように削ってお料理に振りかけても美味しくいただけます。
とろけやすいアズィアーゴ・フレスコを使用した料理の例。フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州の郷土料理店「NODO(東京・神楽坂)提供。イタリアチーズ通信講座ではこうしたレシピも多数ご紹介中。
大塚:リカルド社長のお気に入りはありますか?
リカルド:ひとつ選ぶとすればフレスコです。子どもの頃から家庭で一番消費されていたチーズで、地域のソウルフードのようなものだからです。とはいえ、長期熟成のヴェッキオやストラヴェッキオにはまた違った味わい深さがあって、僕は「メディテーション・チーズ」と呼んでいます。メディテーションという表現はワインにもありますよね。それと同じで、奥深さにじっくりと浸りたいチーズなんです。
大塚:ワインといえば、おすすめのペアリングはありますか?
リカルド:フレスコはアペリティーヴォでフランチャコルタやシャンパーニュと合わせるのがおすすめです。もちろん同郷のプロセッコとも相性抜群です。
イタリアでは、しばしばチーズと同郷のワインが一緒に楽しまれる。
D.O.Pではないメリットもある
大塚:アズィアーゴのようなD.O.Pチーズは伝統的な製法で造られるというお話でしたが、D.O.Pではないチーズはどのように選ばれたのですか?
リカルド:D.O.Pチーズは、変わらない方法で作られ続けています。ただ、D.O.Pではないメリットもあるんですよ。
大塚:と言うと?
リカルド:D.O.Pチーズはミルクの割合、生産エリア、熟成期間など、いろいろな面で厳しい規定を守らないといけません。そのD.O.Pではないということは、裏を返せば、より美味しいものを追求して独自の方法を試せるということなんです。たとえば、別の動物のミルクを混ぜて造るとか。
チーズの原料となるミルクをくれる羊の群れ。
大塚:イタリアチーズ通信講座のテーマのひとつにある「トレ・ラッティ(3種のミルク:牛、羊、ヤギ)のチーズ」というのは、そういうチーズをお届けする意図があったんですね。
リカルド:そうです。放牧された牛、羊、ヤギが食べているものはそのままチーズのクオリティに直結していきます。どの動物のミルクを使うかとか、その配合はどうするかとか、そのときの状況によって一番良いバランスを自由に決められるので、美味しいものができやすいんです。家族経営の小さな生産者が多いので、「生産者の味」と僕は呼んでいます。
左:パリエッタ・アッレ・ヴィオーレ(Paglietta alle Viole)
中央:トーマ・デッレ・ランゲ(Toma delle Langhe)
右:トゥフィン・コン・タルトゥーフォ(Tufin con tartufo)
いずれも牛、羊、ヤギのミルクから組み合わせて造られる。
リカルド:「トレ・ラッティ(3種のミルク)のチーズ」というテーマで選んだチーズがこの3つです。中でも特徴的なのは、パリエッタ・アッレ・ヴィオーレ(画像左)。まぶしてあるのはその地域で採れるスミレです。香りが印象に残ると思います。トーマ・デッレ・ランゲ(画像中央)は熟成期間が短いのでフレッシュ感が強く、ミルクの特徴をはっきりと感じることができます。トゥフィン・コン・タルトゥーフォ(画像右)は木の棚で熟成される、トリュフ入りのチーズです。テーブルチーズなので、料理に使うというよりもそのままアペリティーヴォやデザートとして食べるのが向いています。
大塚:飲食店の方なら知っていても、一般の方はあまり知らない希少なチーズもたくさんセレクトされたんですね。
リカルド:はい。D.O.Pとそうではないチーズ、だいたい半分ずつですね。伝統も楽しみつつ、イタリア全土の多様なチーズを味わって、お気に入りを見つけていただければという気持ちで選びました。イタリアチーズ通信講座のテキストはチーズプロフェッショナルの佐野嘉彦さんが執筆されていると聞いています。とても充実した内容で、これを読めばイタリアチーズのプロフェッショナルに近づけるのではないかと思います。
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